偽王子と嘘少女


橙里side


あーあ、行っちゃった…。


無理にでも引き止めればよかったかな。


きっと君なら、行かないでって言えば、行かなかっただろう。


柊さんはそういう優しい人だから。


はあ、と1つのため息。


「本当馬鹿だよね、橙里は」


後ろからがさがさという草むらから出てきたような音とともに、希子の声が聞こえる。


「いつからいたの?」


「またまたー! 知ってるくせに!」


「変な気配は感じてたけど、まさか希子だとは思わなかったよ」


「そうなの? 気付いてると思ってた」


話しているうちに、いつの間にか希子は隣へ来ていた。


< 251 / 273 >

この作品をシェア

pagetop