偽王子と嘘少女
橙里side
あーあ、行っちゃった…。
無理にでも引き止めればよかったかな。
きっと君なら、行かないでって言えば、行かなかっただろう。
柊さんはそういう優しい人だから。
はあ、と1つのため息。
「本当馬鹿だよね、橙里は」
後ろからがさがさという草むらから出てきたような音とともに、希子の声が聞こえる。
「いつからいたの?」
「またまたー! 知ってるくせに!」
「変な気配は感じてたけど、まさか希子だとは思わなかったよ」
「そうなの? 気付いてると思ってた」
話しているうちに、いつの間にか希子は隣へ来ていた。