偽王子と嘘少女
でも、そのとき…
「ちょっと! その地味男が藤堂くんってどういうこと!?」
教室中に響きわたるくらいの大きな声をあげたのは、園川さんだった。
怒りと悲しみと、絶望のような負の感情がたくさん混ざった複雑な表情をしている。
「ありえない! 藤堂くんは、格好良くて、いつも余裕があって、笑顔が素敵な、爽やかな人なのよ! こんな…変な気持ち悪い人とは、正反対なくらいにね!!」
思いのままに全てを吐き出した様子で、言い終えた園川さんは、なんだか少し息切れをしているようにも思えた。
だけど、その行動を追いかけるように、皆次々に思いを告げる。
「…そうだよ。こんなの藤堂くんじゃない」
「私の知ってるかぐやちゃんは、もっと可愛いし」
「ニセモノは早く帰れば?」
皆の目が違う…。
冷たく閉ざされ、黒い感情に埋め尽くされている。