偽王子と嘘少女
「次、藤堂くんだって」
希子が言う。
それに気付いた目の前の彼は、余裕だとでも言うように、ふっと小さく笑った。
それはそれは小さく、私にしか聞こえていないほど。
変に苛立ちながら、藤堂くんの自己紹介を待つ。
「えーっと。南沢高校2年、藤堂 忍です。紫水とはあまり面識もないこんな僕ですが、短い間よろしくお願いします。楽しい時間にしましょうね」
キラキラの王子様スマイルだった。
クールな俺様キャラはいったいどこへやら。
「よろしくねぇ、藤堂くん!」
私と希子以外の2人の女子は、格好良い人が来てくれた、と喜んでいるようだ。
あの目の輝かせぶりからして、どうやら藤堂くんを狙っているらしい。