偽王子と嘘少女


だからこそ伝えたい言葉があるのに、ずっと言おうと思っていたのに、なかなか声に出すことが出来ない。


「藤堂くん、あのね…「柊さん!」


声が重なってしまう。


真剣な表情の藤堂くんが珍しすぎて、貴重すぎて。


つい何も言えなくなってしまう私がいる。


「昨日は、急にあんなことしてしまって本当ごめんっ…!」


昨日…多分キスのことかな。


振り返るだけでもかなり恥ずかしい。


でも、キスなんかされてショックだったはずなのに、今はなぜだか嫌じゃない。


そう思うことができるのは、ここへ来るまでにいろいろな積み重ねがあったからだと思う。


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