偽王子と嘘少女
「何イチャついてんの、お前の分際で」
ギロリとにらんだ目を向けたのは、隣の彼ではなくなぜか私。
立ち上がって、私のほうへ近付いてくる。
そして腕を掴んで、私を無理やり立たせる藤堂くん。
「ちょっとこいつにお仕置きしてくるんで、俺たちは帰ります。ほら行くぞ」
「えっ、ちょっ……」
個室を出て、お会計へと向かう。
「8番テーブルの分です。お釣りはいらないので。ありがとうございました」
混乱する店員さんの前に突き出したのは、樋口一葉。
「こんなに食べてないよ? ってか、私も払わなきゃ…」
慌てて財布を出そうとするが、彼の足は止まることなく外へ。