偽王子と嘘少女
よし、走って帰ろう。
カバンを抱きしめるように腕の中に入れ、心の中でカウントダウンをする。
3、2、1…
0っ!!
その瞬間、スタートダッシュを切る。
幸いにも人が少ないため、天然美少女という設定の私が、傘を忘れて猛ダッシュしているなんてことに気づいていない。
でも、それがいけなかったんだ。
勢い余って、誰かにぶつかることになるなんて。
「あっ、危ないっ!」
「えっ…」
黒い大きな傘をさした男子は、振り返る前に私にぶつかった。