偽王子と嘘少女
「ってぇー」
「…わ、ごめんなさいっ!」
こんなとっさなときでも、キャラが出てしまう私は、なかなか慣れてきているということだ。
なんて、そんなことはどうでもいい。
今この状況をなんとかしなければ。
「あのぉ…」
とりあえず、飛んでいった傘を拾いながら、何も答えない彼に問う。
だけど、彼の顔を覗き込んで気付いてしまった。
……藤堂くんだと。
「な、何してんの…?」
恐る恐る聞いてみれば、彼は笑いを堪えながら言うのだった。
「ぶっ…お前、そんなキャラなんだな。初めて見たわ」
降り続ける雨の中で、藤堂くんはついに声を出して笑い始めた。