偽王子と嘘少女


一方の私は、さっきのことを思い出して恥ずかしくなる。


「う、うるさいな! はい、傘! 私、もう行くから!」


羞恥心をなんとか隠し、そそくさと退散しようとする。


なのに立ち上がった瞬間、腕をぐっと捕らえられ、座り込んだ彼の胸に飛び込む。


「……っは!? ちょっ、ちょっと!」


濡れた藤堂くんの体は、冷たくて、透けていて、私の顔をより赤くする。


「傘、ないんだろ。入って行けよ」


空いた左手で、黒い傘を手に取り、私に降り注ぐ雨を塞いだ。


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