偽王子と嘘少女
「さ、行くぞ。勉強するつもりだったんだろ」
私の体をはがすと、濡れた髪をかきあげて立ち上がった。
「どうして、それを?」
「分かるよ。お前の考えくらい」
ほら、と手を差し伸べ、ゆっくり重ねると、歩き出した。
「ねえ、傘…入んないの?」
私に貸したままで、雨の中を濡れながら颯爽と進む藤堂くん。
「別に。お前と相合傘するよりは濡れるほうがマシだ」
「はあ!? なにそれ、ひどいんですけど!」
なんて怒ってみるが、私だって本当は気付いてる。
その強がりが、私への優しさだと。