偽王子と嘘少女
「馬鹿じゃないの、高校デビューのくせに…」
つぶやいた言葉が、藤堂くんの耳に届いていたのかなんて分からないけど、私の手から伝わる彼のぬくもりが、より暖かくなってゆく気がした。
「ってか、ここどこ!?」
彼の手に引かれるまま、わけも分からず進んできたけど、着いた先は知らない一軒家。
そこそこ大きな家で、とてもきれいだから新築のようにも見える。
「さ、入って」
私とつないでいた手を振り解き、藤堂くんの言葉から、ここが彼の家だと察する。
いや、家ならなおさら不思議。
なぜ、このタイミングで私を家に招待するのだろう。
自分の家に帰って濡れた制服をどうにかしたいんだけど…。