偽王子と嘘少女
「本当に入っていいの? お母さんとかは?」
「今日は仕事。遅くまで帰って来ねえよ」
「へえ…」
受け流すように答えてしまったのは、『お母さんが帰って来ない』と声に出した彼の目が、なんとなく切なそうに感じたからでもあるかもしれない。
「失礼します」
誰もいないとは言えど、一応挨拶をした私は、まだ地味の頃が抜けていないのかな。
「俺の部屋二階だから、そっちで着替えてても…!?」
「へっ?」
玄関に入ったところで、藤堂くんは私のほうを見て、顔を赤くした。
と同時に、自分が着ていたブレザーを乱暴に脱ぎ、私にかける。