偽王子と嘘少女
数分が経ち、彼が戻ってきた。
「あっ…こ、こっちの部屋…使いますかっ…?」
私を見るなり、さっきのことを思い出したのか、言葉を詰まらせる。
「えっ…!? あ、えっと…つ、使います…!」
そんな藤堂くんにつられて、私も素が出てしまった。
案内された部屋に、私も急いで駆け込む。
さっき、逃げるように入った彼の気持ちがちょっとだけ分かった気がした。
…違う、これは彼のせい。
藤堂くんが、急に家に入れるから。
藤堂くんが、彼女でもない私に優しくするから。
全部…全部、藤堂くんが悪い。
私のせいじゃないもん。