偽王子と嘘少女


なんて、藤堂くんの香りに包まれた部屋の中で思ったところで、勝てるわけないよ…。


用意してくれた服だって、紺色の大きめなジャージ…どう考えても、藤堂くんのじゃん!


無理だって、こんなの着れるわけないって!


分かるでしょ!?


私、元地味子なんだよ?


それなのに異性の部屋で異性の服を着るとか、どんな罰ゲームだよ、って話!


普通の女の子なら嬉しくなると思うけれど、私は違う。


嫌がらせとしか、思えないってば!


でも、着るしかないんだよね…?


私は、顔をしかめながら、なんとかジャージを身につけたのだった。


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