偽王子と嘘少女
「ジャージ、借りたままなんだけど…」
私にとっては、帰り道どうこうよりもそっちの方が大事。
「それならあげるよ。服くらい買えばいいんだし、気にすんな」
「…でも」
上下セットになっているやつだから、より頷くことが出来ない。
「これは後で返す。ちゃんと洗濯もするし、アイロンだってかけておくから」
「えっ! いいよ、お気に入りのやつっていう訳でもないし」
藤堂くんは本当に遠慮しているようだ。
でも、それじゃあ私が納得いかないの。