偽王子と嘘少女
「それより今、こいつのこと、ぶりっ子でモテたいのが丸見えだとか言ってたな」
そんな前まで聞いていたなんて、となんだか恥ずかしくなっていると、園川さんは固唾を飲んで、ゆっくりとうなずいた。
「お前、間違ってるぞ。柊は本当はそんなやつじゃない。好きな人に会えるようにって、好きな人に振り向いてもらえるようにって、毎日毎日努力し続けているような、馬鹿正直なくらいそいつが大好きな、ただの乙女なんだよ。俺が彼氏とか、そんなのこいつにとっちゃ眼中にねぇだろうよ」
言葉を紡ぎながら、一瞬だけ私の方を見た。
真剣で、それでいてどこか優しい目だった。
私のことを嫌っていると思っていたのに、ここまでフォローしてくれるなんてなんて。
もしかしたら、藤堂くんの本当の優しさに気づいていなかったのは、私のほうなのかもしれない。
彼の言葉を聞きながら、なごやかに思っていた。