情愛シンデレラ~悪魔な副社長と堕ちない花嫁~
《17》別れは突然に
蓮side~
「副社長を連れて参りました」
「ご苦労だ。神尾。蓮、わしの隣に座れっ」
「はい、会長」
「敦司様から全てを訊いたぞ。蓮。帝和銀行の『金森薬品』の融資の話、敦司様に直談判して取り付けていたそうだな」
神尾がお爺様に話した際は、『伊集院家』と『桐生家』の関係に罅が入らぬようその部分だけは隠してくれていた。
「申し訳ありません」
俺はお爺様に謝罪した。そして、目の前のソファに腰を下ろす敦司様と目線を合わせた。
「・・・『金森薬品』が研究している新薬は生物兵器にも成り得る危険なモノだと訊いた」
「お言葉を返しますが、危険なモノしれませんが、その新薬の研究と臨床を重ねれば、人の命を救うかもしれないんです。敦司様」
「蓮君が『金森薬品』のご令嬢に好意を寄せているのは理解しているが、余りにも危険過ぎると私は判断し、桐生会長に全てを話した」
「蓮、日葵さんのコトは諦めさえすれば、わしは何も言わない」
「俺は日葵と結婚する」
「蓮様・・・」
俺の後ろで控える神尾は俺の名を呼び、狼狽えた。
「神尾お前が居ながら、何故、このような状況になったんだ?
大体、敦司君に直に頼みゴトするなんて・・・言語道断だ!!蓮」
「・・・」
「いいから、『桐生建設』から金森真琴と金森日葵は追放だ!神尾、二人にそう伝えて来いっ!!」
「待って下さい!!」
「わしは待たない。孫であるお前が危険なコトに足を突っ込むのは見過ごせない。
お前の花嫁はこのわしが決める!!いいから、日葵さんとは別れるんだ!」
「分かりました。でも、日葵と話をする時間を下さい。会長。金森さんの警護は出来れば、後ろに控えている柊さんにお願いしたい」
敦司様の後ろには紘人さんの父親の柊倭人(ヒイラギヤマト)さんがひかえていた。
「その方がいいな。柊、頼む」
「承知しました。桐生会長との話が済む次第、柊を副社長室に向かわせる」
「もう少し駄々を捏ねると思ったが、素直にわしの命令を受け入れるか・・・」
お爺様も高齢で勘も鈍くなったのか、俺の演技を欺けなかった。
「俺は仕事があるので、失礼致します。伊集院元総理に会長、柊さん」
「神尾お前は二人の別れを見届けろ。見届けたら、わしに報告するんだ」
俺と神尾は共に会長室を出た。
「金森さんの護衛を柊さんに任せたら、神尾、俺は日葵と出かける・・・」
「何処にお出かけなるのですか?」