情愛シンデレラ~悪魔な副社長と堕ちない花嫁~

日葵side~

私と真琴兄ちゃんの二人だけの副社長室。
秘書として半人前の私は蓮や神尾さんの指示がなければ、動けない。
真琴兄ちゃんも同じだった。

二人で、時間を弄ぶ始末。
「俺が強引に新薬の研究を推し進めたのは倒産の危機に瀕していた『金森薬品』を救う為だった」

「でも、それは笹島チーフが真琴兄ちゃんに内緒で・・・」

「・・・俺は嘘を付いていた。
俺は金森夫妻に恩を返したかった。
焦っていたんだ。
笹島チーフが極秘で臨床試験を続けていたコトを黙認した。
その為に・・・加奈子は・・・」

「加奈子?」
真琴兄ちゃんから初めて訊く女性の名前。

「加奈子って誰?」

「笹島チーフの元恋人。笹島チーフと別れ、俺と交際していた」

「じゃ副作用で亡くなったのは笹島チーフの恋人ではなく、真琴兄ちゃんの恋人?」

「嘘を付いて、ゴメン。日葵」

真琴兄ちゃんの優し気な瞳からはポロポロと大粒の涙が幾つも零れていた。

「俺は一体何をしているんだろう。
大切な人の命を奪って、のうのうと生きている」

「真琴兄ちゃん・・・」



< 142 / 179 >

この作品をシェア

pagetop