情愛シンデレラ~悪魔な副社長と堕ちない花嫁~
《7》拉致られた花嫁

日葵side~

硝子の向うのビル群は茜色に染まり、群青の色が少しだけ混ざり始めていた。


「日葵、俺はまだ仕事だから…先に邸宅の帰れっ」

「へっ?」
私は目を点にして変な声を出す。

「日葵様貴方は今夜から蓮様の邸宅に住むんですよ」

「ち、ちょっと待って下さい・・・」

私は神尾さんの話にストップをかけた。私は脳内で、今朝の出来事まで時間を巻き戻していく。

今朝、私は母に見送られ、田園調布の自宅を出た。


意味深に笑う母の表情を思い出し、ハッとする。


「これか・・・母の意味深な笑いの正体は・・・」

「日葵様、お話の続きよろしいですか?」
今まで、話を制されていた神尾さんが堰を切ったように話し続ける。

「邸宅のお戻りになられたら、まずは引っ越しの荷物の整理をして下さい。そして、その後は本宅での挨拶とディナーの予定です」

「蓮さんは・・・?」

「俺は仕事だ。いいから、神尾、日葵をさっさと連れて行けっ」

「承知しました」
蓮さんは私が居ると邪魔なのかさっさと副社長室から追い出した。

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