空にとけた夜の行方。
甘くない生地と、綺麗でない空の色
無塩バター、砂糖、バニラオイル、薄力粉、ベーキングパウダー。使い慣れた材料を調理台の上に並べて、ふうと小さく息を吐いた。
好きなものを見ると、少しだけ落ち込んでいた気分が上向きになる。目に付いたものを並べただけだけど、これらを使うあるものが浮かんで、それを作ろうと思い立った。
そうと決まれば、と、冷蔵庫を開ける。目論見通り、卵も牛乳もそこに在った。取り出して、常温に戻しておこう。
それから棚から取り出したふるいに、使う分だけ粉類をかけていく。
作り慣れた──本当に作り慣れた手順を、まるで手癖のようになぞっていく。
カップケーキ──私が一番好きなお菓子、だ。
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