空にとけた夜の行方。
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「あ、」
支度を済ませて、学校へと行くべく出発して、マンションのエントランスから外へと出た瞬間、間抜けな声が出た。
「あ」
同じようにぽかんと私を見るのは、昨夜さんざん考えたその人。
どうして、なんで、このタイミングで、こんな。
ぐるぐると思考は巡るけれど、思っていたよりも、相対した時のショックは大きくはない。
「おはよ、……舜くん」
恐る恐る付け足した名前も、予想していたよりも震えなかった。そのことに、自分で驚く。
彼はふっと笑う。私が好きな、いや、好きだった、普段より少しだけ柔らかい表情。
「おはよ、みよ」
彼はそう言いながら、足を止めて私を待ってくれる。近所だからか通学が被ることが多いけれど、その度に舜くんは待ってくれる。私の気持ちには気付かずに、いつもと変わらずに。
少し悩んだけれど、結局足を進めて隣に並んだ。失恋した今、舜くんと会った瞬間逃げ出してしまうかもしれないくらいには思っていたのだけど、案外私は落ち着いている。