空にとけた夜の行方。


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暁 みよ、16歳。何をするにも人より時間がかかり、人と話すことも苦手。落ち込みやすくて、後ろ向き。さしたる特技も趣味もない、のろまで冴えない女子高生、それが私だ。


唯一お菓子を作ることだけは人並みくらいには得意で、落ち込む度に大量のお菓子を作っては、母をはじめとする周りの人から呆れられていた。


プリンにマフィン、タルトにマカロン、ベーグル。カスタードクリームを詰め込んだシュークリームや、ココナッツ風味のクッキー。さくさくのスコーンに、付け合せのホイップやシロップ。今まで作ったものを数え上げていけばきりがない。


家族でも食べきれないそれらの貰い手は、私の数少ない友人らや、幼馴染だった。



──俺、好きな人いるよ。



「っ、」


唐突に、聞こえるはずもない声が耳の裏で響いて、声を詰まらせた。


ガシャン、という音をたてて、手にしていた泡立て器がすべり落ちる。その鋭い音に、目の前の作業に向けていた集中が急激に霧散していくのを感じていた。


視線を混ぜかけの生地に落として、溜息をこぼした。


「……あ」


そうして、不意に思い至る。つい、いつもの分量──砂糖の量を少なくしたもので作り始めてしまった。


甘さを抑えた仕上がりになるような、分量。私の好みでは、ないのに。


「……なに、やってるんだろう」


──このカップケーキは、"彼"にあげるためのものではないのに。
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