空にとけた夜の行方。
「……それで、用って?」
それでも、どうか違いますようにと、そう祈った私を嘲笑うかのように。聞こえてきた声は、よく知った、知りすぎたもので。
舜くん、だ。中に、舜くんと、誰か女の子が、いる。
何の用か、と、彼は聞いた。けれど、私は嫌な予感に息苦しさを覚える。呼び出されたと言っていた。放課後の教室、呼び出されて、二人きり。こんな状況での用向きなんて、一つしかないじゃないか。
「……わ、わたし、実は、前から、片瀬くんのことが……」
様子は見えないのに、彼女の震えている声を聞いているだけで、すごく緊張しているのがありありと伝わってくる。
その先に続く言葉が何か、私はわかってしまっていた。聞きたくない、言わないで。そう願うのに、私はそれを止めることも、ここから立ち去ることも出来ない。
「っ、好き、です!」
──ああ、言わないで。
誰にも届かない願いは虚しく、すぐに散ってしまう。たった四音に、心臓が止まるかと思った。
私は、何をしているんだろう。不意に、どうしようもない羞恥心と、罪悪感に襲われる。こんな、盗み聞きのようなことをして。