赤い花、散らさぬように
目線を下にさ迷わせながら、うろたえる。
ここまで言えば警戒してくれるかなと思ったけど、次に彼女が言ったのは、予想外の言葉だった。
「……ひ、紘之さんになら、食べられても、いいです」
震えながら言われたその言葉に、頭の奥が熱くなった。
………いいわけ、ないだろ。
どうなるかわかってるのか。
八つも歳上の男に、そんな大事なものを手渡す必要はない。
彼女の未来にはきっと、もっと相応の相手がいるはずなのに。
「…………紅さん」
低い声で、名前を呼んだ。
彼女の肩が跳ねる。期待に満ちた純粋な瞳が、俺を見つめていた。
「……俺以外の奴に、そういうこと言っちゃダメですからね」
俺じゃなければ、きっとこの場でキスくらいされてても仕方ない発言だ。
俺じゃなければ。
………俺なら、我慢できる。