赤い花、散らさぬように
にっこりと笑って言った俺を、紅はどこかショックを受けているような顔で見つめた。
「…………はい」
彼女は俯いて、先程より沈んだ声で返事をする。俺はそれに、気づいていないふりをした。
紅、ダメだよ。
俺はきっと、大事にできない。
その花びらを一枚も散らさずに、愛してあげることはできないだろうから。
俺に必要以上のものを委ねたら、きっと紅が後悔する。
それから会話は減り、早々にレジで会計を済ませた。
コンビニに寄って、用事を済ませた帰り道。
人通りの少ない道を歩いていると、近くの路地から何やら言い争う声が聞こえてきた。
紅を反対側に避けて、ちらりと様子を伺う。