赤い花、散らさぬように
見れば、そこにいたのは若い男たち。ひとりの男を数人で囲っている。
明らかに面倒くさそうな雰囲気に、思わず顔をしかめる。スルーしようとして、横に紅がいるのを忘れていた。
げ。
紅は俺の身体を押し退けて、路地の様子を伺っていた。ひとりが男を殴ったとき、その目が大きく見開かれる。
二人目が男の顔をめがけて腕を振るうのと、紅の声がその場に響くのは、ほぼ同時だった。
「おい、てめーら」
おおよそ少女のものとは思えない、乱暴な口調。声をかけられたことに気づかないのか、男たちはそのまま暴力を振るい続ける。
「聞こえてんのかクソ共!!」
男たちが動きを止める。もはや俺は、半ば諦めかけていた。
紅が俺の前に仁王立ちする。どこぞのヤンキーよろしく、立派にメンチを切った紅は、完全にキレていた。