赤い花、散らさぬように
「クソッ……!」
投げられた男が悔しそうに唇を噛む。
すると、別の男が紅に後ろから襲いかかろうとしていた。
できれば紅の怒りを収めて早々にこの場を立ち去りたかったが、そうもいかないらしい。
俺はすぐにその男に蹴りをお見舞いする。ついでに近くで立ち上がろうとしていた男も殴る。
どこの不良か知らないが、こっちはこれが本職だ。リンチの現場を、一方的な暴力が大嫌いな紅に見つかったのがこいつらの運のツキだ。
続けて殴りかかってきた男の拳を避けて、腹を殴る。
紅の方を振り返って、彼女と対面する男が持っているものを見て俺は目を見開いた。
鈍く光るあれはーー刃先。
「紅!!」
大声で名前を呼ぶ。しかし彼女の反応の方が一瞬遅かった。男が持ったナイフの先が、紅の頬をかすめる。
「!」
痛みに紅が顔を歪める。俺は小さく舌打ちして、男の手元を思いきり蹴った。