赤い花、散らさぬように
「………いいの?俺と一緒にいたら、『普通の女の子』にはなれないよ。ヤクザの彼女してる女子高生なんか、なかなかいないと思うけど」
「ふふ。いいです。いいんです、もう。私、今まで何度もヤクザの娘じゃなかったらって思ったけど、ヤクザの家に生まれたから、紘之さんに会えたんですよね」
いつのまにか、紅は大人びた表情で笑うようになっていた。
五年前、出会った頃の俺たちは、意思の疎通が上手くできなくて、一緒にいる度に衝突していた。
なんでこんなガキの面倒見なきゃいけないんだろう、なんて思って。
今となっては、一緒にいるのがこんなにも心地いい。
紅は、気づかないうちに成長していた。泣き虫な女の子から、強くて綺麗な女性へ変わろうとしていた。
俺も、気づけば色んなことが変わっていた。落ち着いたし、周りがよく見えるようになった。紅と一緒に成長していた。
花はもう、きっと簡単には散らない。
この手も今ならちょうど良い力で、愛しいものを抱きしめることができると思うから。