赤い花、散らさぬように



この少女は、中学に入って実にバランス悪く成長した。


嫌というほど男に囲まれて生活しているというのに、何故かこんな風に近づくと、途端に意識し始める。



………しかも、俺にだけ。



歳が近いからなのか、なんなのか。


理由はわからないけれど、本当に勘弁してほしい。



「これは、この公式使うんですよ。………お嬢、聞いてます?」



わざといぶかしむような口調で尋ねると、紅はハッとして「は、はい!」と慌てた様子で答えた。


「勉強する気あるんですか」

「あ、あります!ありますよ」


眼鏡を指先でくいっと掛け直すと、紅は真面目な顔をしてこちらを向いた。



「この前の模試も良くなかったし、もっと頑張らなきゃいけないんです」



そう言って、彼女はシャーペンを握り直す。「すみませんがもう一度言ってもらえますか」と言われたので、先程言ったことを繰り返し教えた。





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