殺人鬼からのラブレター
誰にも出くわさぬように家路に着き、急いでシャワーを浴びて血液を洗い流す。



前に進むのが人生だと言うのなら、繰り返す時の中で果たして俺は、前に進めているのだろうか。


それとも……。



震える両手を開くと手の平にはまだ、人の肌を刺した感触が残っていた。


込み上げる嗚咽を、咽頭でギリギリ飲み込む。


濡れた瞳から、何かが零れ落ちる。


「くっ、ふっ……」

両頬を抑えながら、見えない何かに対して潰れそうな胸をぐちゃぐちゃに握り締め、風呂場で泣いた。

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