殺人鬼からのラブレター


人1人を殺しておきながら、何食わぬ顔をして家族と共に朝飯を食べ、アイと一緒に学校へと向かう。

「今日、家のポストにこんな手紙が入っててさー。悪質なイタズラだよね。嫌になるよ」


そう口を尖らせる彼女の手には、俺が朝したためた”死の手紙”が握られていた。


……手紙を書く前に、アイに全てを話したこともあった。

『今日からお前は幾度となく死にそうになる。だから、俺の側から離れないでくれ』、と。

けれど彼女は、信じようとはしなかった。

『そういう冗談は、告白してから言ってよね』っと笑いながら、信じようとしなかった。


だから俺は、真実を告げずに誤魔化し続ける。

彼女に”死の手紙”を、送り続ける。


「……それ、アイを死なせたくない、誰かからのラブレターだったりしてな……」

「え、ラブレター ? レン、面白いこと言うね」


乾いた笑いで誤魔化せば、アイは心配そうに俺の顔を覗き込む。


「レン、なんか変だよ? 大丈夫? 」


その仕草に、どうしようもなく心が掴まれて。

死体の冷たさを思い出して、君に、触れたくなって。

生きているアイを、抱き締めてしまいそうになった。
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