殺人鬼からのラブレター
ローファーにコツンと、何かが当たる。

携帯から足元に目をやると、工事中と書かれた看板が、何故か倒れていた。



不穏な空気を感じ取り、ハッと顔を上げる。


暗闇の中でよく目を凝らしてみると、そこには数メートル先に蓋のされていないマンホールが、大きな口を開けて私を待っていたのだ。



【19時00分、帰宅途中に工事中の看板が倒れており、そのまま気付かずに工事途中の穴に落ちて死亡。】

その穴はまるで、私を死へと誘い飲み込まんとしているかのように見えた。

もしも気付かずに、そのまま歩いていたなら。


そう考えただけで、肌が見えない感情に打ち震える。


「っ、、、!」


腹の裏から叫び出したい恐怖が、全身を襲った。


危なかった。

レンからのメールを見て思い出さなければ、このまま穴に気付かず落ちていたかもしれない。

風も吹いていないのに倒れてしまっている看板を起こしながら、私は確信する。

あの手紙は本物だったんだ、......と。


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