殺人鬼からのラブレター
腰が丸くなっているおばあさんが、ふぅふぅと荒い息を吐きながら横断歩道に向かっていく。
ひとりでこんな暗がりの中、一生懸命に荷物を運ぶその小さな背中に、思わず手を伸ばしたくなってしまう。
「あ、おばあさっ......」
反射的に駆け出そうとした、瞬間。
「行くな」
レンに繋いだ手をグイッと引かれ、静止させられた。
物言いたげに後ろを振り返るも、彼はキツイ口調で私を諭す。
「行くな。行けばお前は、死ぬんだ」
「で、でもっ......」
そうこうしている内に、おばあさんは点滅しかけている横断歩道を渡り切ろうとしていた。
信号待ちをしている車内から、迷惑そうにドライバーがその光景を見つめている。
ハラハラとしながらただ静かに傍観するしか出来ない自分に歯痒さを感じていると、先頭で信号を待っていた車の助手席から、若い男の人が降りてきた。
若い男の人は小走りでおばあさんに近付き、その手から荷物を預かる。
「おばあちゃん、大丈夫? 手伝うよ。貴女が渡ってくれないと、車が動けないし」
「ああ、ごめんねぇ。ありがとう」
若い男の人によって無事横断歩道を渡り切ったおばあさんは、彼に何度も頭を下げていた。
男の人はそれに応えるかのように小さく手を上げ、また小走りで車内に戻っていく。
道路は再び、車の行き交うエンジン音に支配された。
ひとりでこんな暗がりの中、一生懸命に荷物を運ぶその小さな背中に、思わず手を伸ばしたくなってしまう。
「あ、おばあさっ......」
反射的に駆け出そうとした、瞬間。
「行くな」
レンに繋いだ手をグイッと引かれ、静止させられた。
物言いたげに後ろを振り返るも、彼はキツイ口調で私を諭す。
「行くな。行けばお前は、死ぬんだ」
「で、でもっ......」
そうこうしている内に、おばあさんは点滅しかけている横断歩道を渡り切ろうとしていた。
信号待ちをしている車内から、迷惑そうにドライバーがその光景を見つめている。
ハラハラとしながらただ静かに傍観するしか出来ない自分に歯痒さを感じていると、先頭で信号を待っていた車の助手席から、若い男の人が降りてきた。
若い男の人は小走りでおばあさんに近付き、その手から荷物を預かる。
「おばあちゃん、大丈夫? 手伝うよ。貴女が渡ってくれないと、車が動けないし」
「ああ、ごめんねぇ。ありがとう」
若い男の人によって無事横断歩道を渡り切ったおばあさんは、彼に何度も頭を下げていた。
男の人はそれに応えるかのように小さく手を上げ、また小走りで車内に戻っていく。
道路は再び、車の行き交うエンジン音に支配された。