殺人鬼からのラブレター
「良かった……」


ホッと胸をなでおろすと、怖い顔をしたレンが口を開く。

「お前は本当に危なっかしいな。おばあさんを助ければ自分が死ぬって、手紙に書いてあっただろう。なのになんで、他人を助けようとするんだ? アイは昔からお人好しだな」

藍色が迫る空の下でも、街灯に顔の半分を影に落とされたレンが怒っているのが分かる。

(よし、こんな時は…… )

口を尖らせる彼の前に小走りで回り込み、私は口角を上げてニッと笑って見せた。


「ありがと、レン。貴方のお陰で私、怪我しなくて済んだよ」

甘えるかのように浮かべた笑みと、その言葉。

私は知ってる。

彼は、感謝の言葉を伝えられることに、慣れていないんだ。

引き止めてくれたことに対して礼を述べると、レンはプイッと顔を背けてしまった。

けれどその耳は赤く染まっている。

顔を斜め下に下げる、これは彼が照れているのを隠している証拠だ。


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