殺人鬼からのラブレター
必死に眼球を上下に動かし、活字を飲み込む。
《アルバイト店員 、岸和田 雄馬(21)が自宅にて首を切って自殺していたことが分かった。また、同時刻に岸和田 雄馬容疑者の母親、岸和田 操子さんが部屋で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。事件直前に、『息子が刃物を持って暴れている』との通報があったことから、この通報直後に操子さんが息子の岸和田容疑者に刃物で切りつけられたと見て、捜査を進めている。また、岸和田 雄馬容疑者は、近隣住民の複数の若い女性に対してストーカー行為を繰り返していたとして、警視庁から厳重注意を受けていた》
新聞を握る手が、震えた。
「この人、昨日、死んだんだ……」
もう襲われることは無いという安心と、なんとも言えない複雑な感情が、胸に溢れる。
昨日、私たちが殴ったから、錯乱して母親を殺してしまったのだろうか。
そう考えると、居た堪れない。
いや、深く考えるのはよそう。
私たちが何をどうしたところでこの男の人はきっと、他者に危害を加え続けていたに違いない。
そう考えていないと、遣る瀬無くて。
崩れ落ちてしまいそうな両足に、力が入らない。
「ふぅー。よしっ」
意を決して、私は”死の手紙”の入った封筒を、ビリビリと真横に切る。
中に入っている紙をカサカサと広げれば、口から溢れたのは驚愕の一言で。
「なに、これっ……」
そこに書かれていた、内容とは。