殺人鬼からのラブレター
画面向こうのアナウンサーが、朝刊に載っていた記事を繰り返し報道している。


《昨日の深夜 、岸和田 雄馬(21)が自宅にて首を切って自殺していたことが分かりました。また、同時刻に岸和田 雄馬容疑者の母親、岸和田 操子さんが部屋で倒れているのが見つかり、死亡が確認されました。事件直前に、『息子が刃物を持って暴れている』との通報があったことから、この通報直後に操子さんが息子の岸和田容疑者に刃物で切りつけられたと見て、捜査を進めています。また、岸和田 雄馬容疑者は、近隣住民の複数の若い女性に対してストーカー行為を繰り返していたとして、警視庁から厳重注意を受けており……》



”死の手紙”を一緒に確認した時に、新聞を見せながらレンにこのニュースのことを話した。

すると彼は、無表情で「良かった」っとだけ言った。


これでアイが襲われる心配は無くなったんだから、良かったじゃないか、と。


誰かの死を喜ぶ感情は、まだ私には分からない。


けれど大人になるにつれて、その感情を知ってしまう日が来てしまうのだろうか。


誰よりも大人びているレンを見て、私は少し悲しくなってしまった。



照り返す夕陽に染まるテレビの画面の中では、アナウンサーが「次の話題は、」っと今度は打って変わって笑顔で原稿を読み上げている。



《昨日発売になりました人気ゲーム、『monster』ですが、売り切れる店舗が続出しており、一部では高額で転売されており問題となっています。これを受けて開発者の株式会社ユーロは特別措置を.......》


「ん?」


よく耳を澄ませば、アナウンサーの声に混じって2階に置いてきた携帯が鳴っていることに気づく。


「電話が鳴ってる? 誰からだろう。」


テレビも消さずに急いで階段をバタバタと駆け上がり、部屋へと戻る。

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