殺人鬼からのラブレター
「あ、レン!おはよー」

声を掛けてきたのは隣の家に住む、幼馴染の加藤 愛だ。


「おう。おはよ」

「あれ? レン、朝練は? マスクもつけてるし、体調悪いの?」

心配そうに顔を覗き込んでくるアイに対し、片手を挙げて返事を返す。

「まぁ、少しな。もう大丈夫」
「本当? 無理してない? 」


アイを一言で言い表すとしたら、”お人好し”。

ただその一言だ。

元々、彼女のことはあまり好きでは無かった。

むしろ苦手だった。

食わず嫌いと似たような、知らず嫌いというものだ。


しかし、小学生の頃。

調子に乗って海に溺れそうになった彼女を助けたのがきっかけで、それ以来俺の中では”俺の苦手なタイプの幼馴染み”から、”鈍臭い幼馴染み”に昇格した女の子である。


アイは救いの手をコッチから伸ばしてやらなければ、すぐに消えてしまいそうな雰囲気を持つ。

だから、自分の意思とは関係なく、無意識に彼女を守ろうとしてしまう。


友人達からは、『お前はあの子に甘過ぎる』と、散々文句を垂らされるが。


アイに彼氏が出来た時はどうするんだとか、俺に彼女が出来ても同じことをするのか、だとか。


そう言えばアイは、タケの想い人だったな。

昨日もどうしたらアイと距離を縮められるのかとか、悩んでたっけ、タケの奴。



< 97 / 158 >

この作品をシェア

pagetop