同じ景色を見れたならば

縮まっていく距離




好き、か。


本当に私は彼のことが好きなのであろうか。


そう、上の空で考え事をしていると


『なーに、ぼーっとしてんの』


『わっ!』


突然真横から声がしたので驚いた。
声を掛けてきたのは噂をすればの浜野さんだった。


『もう、脅かさないで下さいよ!びっくりするじゃないですか』


『だってアヤネちゃんがぼーっとしてお仕事さぼってるから』


『さぼってなんかないですよ。真面目にお掃除しています』


『さっきからそこの棚拭きすぎて棚の色変色しかけだよ』


どうやら私は気が付かないほど棚を拭きすぎていたみたいで
驚きを隠せないでいると、彼は鼻でくすっと笑う。


『次ぼーっとしたらその顔に落書きしてやんからな』


今、きっと私は他人から見ると自分でもわかるぐらいに
喜んだ顔をしているのかもしれない。
いわゆるにやけ顔…。想像したら気持ち悪い…。


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