彼女が指輪をはずすとき
『出会ったときから…先輩が校門前で声をかけてくれたときからずっと…』

涙が目からとめどなく零れ落ちて、頬を伝った。

『わたし逃げてました、自分の気持ちから。あのとき旅行で、先輩が私と同じ気持ちかわからなくて、"尊敬"という言葉に逃げました。ずっと後悔していました。あのとききちんと"好き"って伝えていればって…』

伝えはじめると、今までたまっていた気持ちが止まらなくなる。
伝え終わったあとには、ただひたすら涙を流しては手で拭うの繰り返しだった。

彼はただ何も言わずに私を見つめていた。

なんて自分勝手な告白なんだろう。
でもこの気持ちを心の引き出しにしまうことなんて、私にはできなかった。
伝えないと意味がない。
伝わらない。
あの旅行で痛いほど実感した。

もうフラれたって良かった。
告白したことを後悔するより、告白しなかったことを後悔するほうがきっと辛いだろう。

だから私は全部伝えて涙が枯れ果てたあと、思いっきり笑顔をつくった。

『今更…ですよね。私のことは気にせず、ふってください!』

彼は下を向き、しばらく沈黙が流れた。

フラれたらそのあと普通に話せるかな。
きっと昨日までのようにぎこちなくなってしまうんだろう。
バカだな私。

私は深くため息をつき、ゆっくりと目を閉じた。

『…ごめん』

ああ、やっぱり。
フラれちゃったか。
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