彼女が指輪をはずすとき
私は何故朝日のお墓の前で、彼以外の人のことを考えているの?
ぶんぶんと首を何度か横に振り、もう一度お墓に向き直る。
愛してるのは朝日だけよ。
出会ってからずっと、これから先も。
左手薬指にはめたピンクゴールドの指輪を見つめてから、右手で包み込んで彼を想う。
8月にもなると風は生暖かく、額に汗がにじむ。
上を向くと、夏真っ只中をということを思わせるような雲ひとつない青空がどこまでも広がっていた。
「来月、また来るね」
私は立ちあがり彼のお墓を後にしようとすると、向こうから白の半袖のワイシャツに、黒のネクタイを締めた男性がこちらへと向かってくる。
男性もこちらへ気付き、私を見て足を止めた。
「ひかりちゃん?」
朝日の一周忌のとき以来の再会だった。
「お父さん…」
向こうからやって来た男性は、朝日のお父さんだった。
3ヶ月前よりもまた少し頬が痩せこけたように見える。
「一周忌以来だね。元気だったかい?」
お父さんは私に微笑みかける。
「…はい。お父さんは会社どうなさったんですか?」
「会社はここからそう遠くないから、休憩時間に足を運んでみたんだよ。今日は朝日の月命日だからね」
お父さんは彼のお墓に歩み寄り手を合わせる。
しばらく目を閉じ沈黙を保つと、再び目を開けて私のほうへ向き直る。
「いつも綺麗なお花を供えてくれてありがとう」
彼のお墓の前に供えられた向日葵の花束が風になびいている。
彼は天国で喜んでくれているのだろうか。
いつもそんなことを考える。
「いえ、私にできるのはこれくらいしかありませんから」
彼が亡くなってしまった今、私には月命日にお墓に訪問しては花を供え、お墓を綺麗にすることくらいしかできない。
それが辛い。
ぶんぶんと首を何度か横に振り、もう一度お墓に向き直る。
愛してるのは朝日だけよ。
出会ってからずっと、これから先も。
左手薬指にはめたピンクゴールドの指輪を見つめてから、右手で包み込んで彼を想う。
8月にもなると風は生暖かく、額に汗がにじむ。
上を向くと、夏真っ只中をということを思わせるような雲ひとつない青空がどこまでも広がっていた。
「来月、また来るね」
私は立ちあがり彼のお墓を後にしようとすると、向こうから白の半袖のワイシャツに、黒のネクタイを締めた男性がこちらへと向かってくる。
男性もこちらへ気付き、私を見て足を止めた。
「ひかりちゃん?」
朝日の一周忌のとき以来の再会だった。
「お父さん…」
向こうからやって来た男性は、朝日のお父さんだった。
3ヶ月前よりもまた少し頬が痩せこけたように見える。
「一周忌以来だね。元気だったかい?」
お父さんは私に微笑みかける。
「…はい。お父さんは会社どうなさったんですか?」
「会社はここからそう遠くないから、休憩時間に足を運んでみたんだよ。今日は朝日の月命日だからね」
お父さんは彼のお墓に歩み寄り手を合わせる。
しばらく目を閉じ沈黙を保つと、再び目を開けて私のほうへ向き直る。
「いつも綺麗なお花を供えてくれてありがとう」
彼のお墓の前に供えられた向日葵の花束が風になびいている。
彼は天国で喜んでくれているのだろうか。
いつもそんなことを考える。
「いえ、私にできるのはこれくらいしかありませんから」
彼が亡くなってしまった今、私には月命日にお墓に訪問しては花を供え、お墓を綺麗にすることくらいしかできない。
それが辛い。