彼女が指輪をはずすとき
「かんぱーーい!」

亘さんが乾杯の音頭をとり、俺たちは机を囲みビールジョッキをもって乾杯を交わす。
そして俺は立ち上がって先輩社員の人たちをまわり、一人一人と乾杯を交わしていく。

とうとう金曜日の新入社員歓迎会が始まった。
6時半に会社をでた俺らは、会社から歩いて10分ほどの居酒屋に足を踏み入れた。
俺の所属する部署全員参加で、新入社員は俺を含めて5人だ。

俺は乾杯が終わり、もとの席に戻る。
乾杯を終えた飯沼が俺の左隣座った。

「ぷはーっ!ビール久しぶりだわ」

飯沼のジョッキの中身は、すでに半分まで減っている。

「お前いきなりとばしすぎだろ。ジョッキ一杯が限界ならもっとペース落とせよ」

「だーいじょうぶだって!まだ全然へーきだし」

「あとで潰れても家まで送らねーぞ。俺と家反対方向だしな」

絶対あとで潰れるなこいつ。
酔って上機嫌な飯沼を見て、俺は確信していた。

「おっ、三笠!飲んでるか~?」

俺らの部署の部長がジョッキを右手に握りながら、ふらふらと俺に近寄ってくる。

「ぶ、部長…」

部長は笑いのツボが皆とずれていて、ノリが中年くさく絡まれると面倒くさい。
まずいと思った俺だったが、逃げる暇がなく結局絡まれてしまう。

「なんだよ全然飲んでないのか。お前らのための歓迎会なんだぞ!ほらもっと飲め飲め」

店員さんから新しいビールグラスを受け取った部長は、俺の目の前の机にドンと勢いよく置いた。
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