彼女が指輪をはずすとき
きみに伝えたいことば
俺は階段をのぼり、急ぎ足で屋上のドアをくぐり抜ける。
今日は快晴で、薄暗い階段を抜けた先に雲ひとつない青空が広がっていた。

「あ…亘さん」

俺の目の前には、フェンスにもたれ掛かり煙草を吸う亘さんの姿があった。

「……三笠?」

亘さんは俺を見て驚いたような顔をした。

煙草を吸う亘さん、様になるなあ…。

煙草を吸う仕草がこんなにも大人の男の色気を醸し出せるものかと驚くほど、彼は煙草が似合う。
俺も煙草を吸えばあんな風になれるのだろうか。

「どうしたんだ、急いで」

彼のその言葉に、見とれていた俺ははっとする。

「そうだった!亘さん、藤堂さん見てませんか」

一瞬間をあけて、彼は煙草の煙をはきだして俺を見た。

「…さあな、見てない」

屋上には来てない、か。
あてが外れたようだ。

「そうですか、ありがとうございます」

「三笠」

彼にお礼をいい屋上から立ち去ろうとしたとき、彼から名前を呼ばれ振り向く。

「はい」

「お前、藤堂のこと好きか」

唐突な質問に、俺は驚いて拍子抜けする。

「え!?い、いきなりなんですかっ!」

藤堂さんが好きなこと、亘さんにばれていたのか。
俺は恥ずかしくなり、顔が真っ赤に染まっていくのがわかった。

「あいつはお前が思っているほど強くないし、色々と抱え込む。むしろお前が思っているようなあいつの印象とは真逆かもしれない。それでもお前は、彼女を好きでいれるか?」

「…」
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