意地悪な片思い
赤いブレーキランプ
冷蔵庫の一番下の段、あまり冷えないようにと気遣ってくれたのか、わざとらしく手前に入っていたそれを私は取り出した。
すぐに冷蔵庫を閉める。
袋は手に取った途端、ゴワっと音がなった。たぶんビニール袋じゃなくて茶色の紙袋に商品が納められてるから。
最近はビニール袋がめっきりだけど、そうそうここのパン屋は昔ながらの紙袋で渡されるんだ。味もいいけど、こういう昔ながらの感じ仕様なのがますます嬉しかったりする。
ほら、映画とかで、きれいなお姉さんがよくフランスパンを大きな紙袋に入れて街道を歩いてたりするじゃない?
あれみたいに。
といっても、袋の表には速水さんの名が特に書かれていたわけでもないし、100パーセントそれだという確信がもてたわけではない。
本当にこれかな?
と一瞬疑って、紙袋を手中で一周させてみる。
最後の側面をひっくり返して、杞憂に過ぎなかったことを私は悟った。
絶対これ!
すぐに思った。
だってそこには見覚えのある、薄黄色の付箋がぺたりとくっつけてあったから。
おまけに男勝りな字で『サンドイッチ 市田』とも書いてある。
お笑い芸人にいそうな名前だ、なんて
書いてあった言葉に思わず吹き出しそうになりながらも、隣にはほかの社員さんが休憩を取っていらしているので、何とか堪える。
思い出し笑いでもしそうなので、そそくさと他の社員さんに挨拶を交わすと急ぎ足で自分の席へ戻った。
もちろん前もって汲んでた、コーヒーが入ってるコップも一緒に。