意地悪な片思い
発熱ビート
週末が開け、出勤した月曜日から私はその人と会話できるチャンスをうかがっていた。
しかし一段落ついたといっても、書類に一通り記録を取らなければならない。
ここいらの展示場で一番大きなものを担当させていただけたんだ、同じようなイベント企画を任されたとき、きっと私がまとめたレポートに目を必ず通すだろう。
残るものとして恥のない内容にしないと…。
そんな私の都合だけならまだ彼と話す機会は設けられたかもしれないが、速水さんもお仕事が大変そうで、デスクに座っている姿さえなかなか見つけられなかった。
結局その日はからっきしチャンスがなく、火曜日に持ち越す。
運よくこの日は廊下で内川くんにすれ違った。
「あぁ今週は忙しんですよ、特に。」
仕事の調子を伺って、彼が口にしたのは予想通りの言葉。
「ごめん、電話だ。」
多忙さを象徴するかのように、彼はごめんと謝る。
「うん、ありがとごめんね。」
内川くんはすぐに電話にでた。
私も仕事しなくちゃと踵を返してメインルームに向かう。
はぁって思わず溜息。
速水さんふら~っといつの間にか現れるから、そんな意識したことなかったけど、
会うのも話すことも、結構難しいことだったんだ。
思えば、彼から話しかけてくれる方が多いんだもん。
速水さんはそういうの得意そうだけど、話せる且つ、人目がない場所、なんて私そういうの計算して行動するの苦手だし。
最悪金曜日まで粘って、だめだったら携帯で済まそう。
これ以上お礼言うの先伸ばすのも何だから。
バタンとろうかの扉を私は閉めた。