意地悪な片思い
鼓動の言いわけ
あー、なんなんだろう、この状況。
私の隣には長嶋さん。
長嶋さんの向かいには私の同期の内川くん。
そして、私の向かいには速水さん。
頼りない木の板で区切られた和室、
掘りごたつのここは足元には大きな溝が空いていてお座敷なのに足をプラプラと垂らすことができる。居酒屋といっていいこの店は他のお客さんの声でも騒がしい。
さすが華金といったところか、
今の私には闇金に感じられるけど……。
それもこれも彼のせい。
私の目の前で呑気に枝豆をつついてる、この速水さんの。
会社終わり、長嶋さんに飲みに誘われた私は彼と一緒に会社を出た。
「久しぶりですね、いつものところにしましょうか。」
飲みに行く前の決まり台詞を私は口にしながら、「おう、今日もとことん飲むぞ。」なんてことを言うだろう長嶋さんの言葉を待っていた。
長嶋さんから視線をパッと前にうつして。
車通り、二つの影。
細めの背丈が大きい。
あ、やばい。
そう思ったときには遅かった。
「あれ、お前らもこれから飲み?」
長嶋さんの口から待っていない言葉が飛び出した。