クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
結婚式での出来事
いつもと変わらない週明けの、忙しい月曜日がやって来た。
フロアでは絶え間なく電話の音が鳴り響き、対応に追われる社員の声であふれている。
「永沢さん、これ、営業部まで頼むよ」
「はい」
私は部長からファイルの束を受け取って、廊下に出る。
以前のように、足取りは重くない。
むしろ、もしかしたら小野原さんの姿を見られるかもしれない、なんて期待してしまう。
出会えないこともあるけど。
でも、こんな気持ちになるなんて、少し前までは想像も出来なかったことだ。
あれから、小野原さんは飲みに行くことなく、朱音さんを家に送り届けたらしい。
……朱音さん、早く良くなるといいけど……。
エレベーターで営業部のある階で降り、廊下の角を曲がる。
ドンッ……!
その時、向こうから走ってきた誰かとぶつかって、バサッ……、っと何冊かファイルが床に散らばってしまった。
「すみません!」
「いえ、こちらこそ……」
顔を上げて、ハッとする。それは向こうも同じだった。
……彰斗だ。
でも、彰斗の顔を見たのは一瞬だけで、私はすぐに落ちたファイルを拾うことに専念した。
彰斗も自分の足元近くのファイルを拾って、私の方に差し出す。
「ありがとう」
受け取る際、なぜか彰斗が私の顔をじっと見ていることに気付いた。
「……どうかした?」
その視線の意味が分からず、首をかしげる。
すると、私の問いかけにハッとしたように、彰斗は視線をずらした。
「ああ、いや……何か、感じが変わったな、と思って……」
「……?」
感じ……? ……確かに彰斗の顔見ても、前ほど動揺してないな……。