クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「--私が優花ちゃんと出会ったのは、入社式で--」
百名ほどの招待客が集まった披露宴会場では、マイクの前で優花ちゃんの同僚がお祝いの言葉を述べている。
今日の式と披露宴は、一軒の邸宅を貸し切って行われるというコンセプトの、ハウスウェディングだ。駅から歩くには少し遠い場所にあるので、駅前の専用のバス停から、友達と一緒に、送迎バスに乗って会場に着いた。
先ほど同じ敷地内にあるチャペルで、結婚式がとり行われた。誓いのキスで優花ちゃんが涙ぐむのを見て、私もすごく幸せな気持ちになって、もらい泣きしてしまった。
円卓にはピンクと白を中心とした花が飾られ、次々と運ばれてくる料理がその隙間を埋めていく。
会場の四方が大きな窓で囲われていて、そこから庭に咲く色とりどりの花と、噴水が見える。その横には小さなブランコなんかがあったりして、本当に西洋の邸宅に招かれたような温かさがあった。
席は男女別々になっていて、彰斗とはテーブルを同じにすることはなく、私は内心、ホッとしていた。
付き合ってたこともあるけど……この前、会社であんなことを言われ、少し気になっていたから。
お色直しが終わり、披露宴後半のお楽しみのデザートは、各自が好きなものを取れるブッフェ形式だった。
このフリータイムの間に新郎新婦の二人は、各テーブルを回って招待客に挨拶したり、写真を撮ったりしている。
私もサークル仲間のアヤちゃんと共に席を立ち、スイーツの列に並ぶ。
その時、私達の後ろにいた、おそらく新郎新婦のどちらかの、後輩であろう若い女の子達の会話が耳に入ってきた。
「ねえ、あの人カッコよくない?」
「やっぱり?新郎友人代表で挨拶してた江田さんて人でしょ?」
……どこ行っても、やっぱりモテるんだね。
そんな人が、今さら何の話があるというんだろう。
彰斗はテーブルに座ったまま、周りの友人と楽しげに会話がしている。
私の方に近付いてくるような気配も、気にしている素振りもない。
きっと、何でもないんだ。良かった。
そう思うと私はすぐに、どれにしようかな、と目の前に広がる甘いスイーツに心を奪われていた。