クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
マンションの駐車場に着いて、車を降りてから部屋に行くまで、小野原さんは私の手をずっと握って離さなかった。
リビングでトレンチコートを脱ぐと、小野原さんに手を引かれてソファーに座らされた。
「……そういう服装も新鮮でいいな」
「え……?」
私は、自分の格好を見下ろした。……そうだった、今日はお呼ばれ用のワンピースを着てるんだった……。
誉められたのだと分かり、嬉しくて胸が高鳴る。
でも--小野原さんは、私が泣いた理由を聞いてこない。
私が自分から言うのを待ってくれてるのかな……?
「……あの……急に泣き出したりして……びっくりしましたよね……?」
「驚かないはずがない」
……ですよね……。
「でも、不謹慎だが……嬉しいと思った。香奈が辛そうな時に、俺を頼ってくれて」
「……ただ、頼りたかっただけじゃないんです……」
私は、小野原さんの手をぎゅっと握り返すと、今日あったことを話した。彰斗の名前は伏せておいたけど。
「それで泣いてたんだな……」と、話を聞き終えた小野原さんの手が、私の髪を優しくなでた。
「……違います……泣いたのは……」
「?」
「……小野原さんの声を聞いて、すごく安心して……すごく会いたくなっちゃって……自分でもおかしなくらい、涙が出てきたんです」
「そうか……じゃあ、香奈を泣かせたのは俺なんだな」
「え?」
あ、もしかして気を悪くした……?
慌てて小野原さんの顔を見上げたけど、予想に反して、穏やかだった。
いや、むしろ、少し微笑んでるような……。
小野原さんの表情に、戸惑っていると、顔が近付いてきて--
な、何だか分からないけど、キスされる……!?