クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「……私一人でどうやって子供を育てたらいいのよっ……!?」

朱音さんの声が、涙混じりになる。

「……一人で、って……相手は彼氏でしょ……?」

「そうよ……!……でも……逃げたのよ……あいつ……」

朱音さんは、うつむいたまま拳をぐっと握りしめた。

「……体調不良が続いて、生理も遅れてるし、もしかしたら、って思ってたけど、知るのが怖くて……。……誰にも知られたくなくて、自分で検査したら……陽性だった……」

「……」

「……ケンカも多かったけど、彼に私がそのこと伝えたら、急に連絡が取れなくなって……彼の家に行ってみたけど、姿は消えてて……。捨てられたのよ……!」

朱音さんは肩を震わせた。

「……何だか自分の体じゃないみたいに感じて、もう周りとは違う世界にいるみたいだった……。でも、叔父さん達には言い出せなくて……」

「朱音さん……」

……そうだ。朱音さんはまだ学生だ。これからどうしていいか分からず、一人で悩んでいたんだろう。

相談すべきご両親も、いない。叔父さん夫婦が今は親代わりだ、と小野原さんは言ってたけど、昔、反発して迷惑をかけたと思ってる分、余計に話しづらかったのかもしれない。

「……お兄ちゃんに相談しようと思ったけど……私のことでこれから迷惑かけるなら……私なんていなくなった方が……いい……」

「何言ってるの!それは間違ってるよ!」

私は大声で彼女の言葉を否定した。

「……あんたに……私の何が分かるのよ……!あんただって、私なんか、いなくなればいい、って思ってるんでしょ……?そしたら、お兄ちゃんを、独り占め出来るもんね……。それとも、何?……私を助けて、お兄ちゃんに良いカッコしたいわけ?」

「……何ですって……?」


その言いぐさに--


「あなたね……いい加減にしなさいよっ!」


私の中で何かがプツンと切れた。



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