クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
ゴツンッ……

額に軽い衝撃を受けた。

痛……くはない。

与えられたのはキスじゃなくて……頭突きだったか……。

恐る恐る目を開けると、小野原さんが真顔で私を見ていた。

「……怒ってます……か……?」

「当然だ。帰るように言ったはずたが」

低い声が耳に響く。

「……すみません……」

「まったく……ずぶ濡れで倒れてる香奈を見付けた時、俺は心臓が止まるかと思ったぞ」

「……ごめんなさい……。でも、じっとしてられなくて」

「……分かってる」

小野原さんの目はもう怒っていなかった。

「……朱音から聞いた。香奈が朱音を見付けてくれたんだな。それに、川から引き上げてくれたことも」

そう言うと、再び私を抱き寄せる。

「ありがとう」

そして私の額に大きな手を当て、「痛くして、悪かった」と優しくさすってくれた。





小野原さんの話によると、あの後、救急車で私と朱音さんは、この病院に運ばれたそうだ。

私が掛けたトレンチコートが多少なりとも防寒となり、朱音さんの体温はそこまで下がらず、意識もしっかりして、検査の結果、赤ちゃんも無事だったらしい。

意識の無かった私も検査を受けたらしいけど、特に心配するようなこともなく……この部屋で数時間、爆睡していたそうだ。……恥ずかしい……。

「……朱音さん、今はどうしてます……?」

「今は別の部屋で、落ち着いてるよ」

「……私、朱音さんに謝らなきゃ……。結構、偉そうなこと言っちゃったんです……。一番ツラいのは朱音さんなのに……」

「そのことなら、聞いたよ」

「そうですか……」

朱音さん、腹立ててるんじゃないかな……?

でも、私の心配はよそに、朱音さんの反応は意外なものだった。

「後で朱音が、香奈に謝りたい、って言ってたよ。自暴自棄になって、バカなことして、挙げ句、香奈に当たってしまった、って反省してた」

「……」

朱音さん……。

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