クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
「ち、違います!これは、着替えの途中だったから……っ」

慌てて小野原さんに背を向けて、大急ぎでボタンを止め直す。

「何だ、着てしまうのか。だったら、言わない方が良かったな……」

「……変態発言ですよ!」

「否定はしない」

淡々と言い返される。

「そこは否定して下さいっ!それに、もっと早く教えて下さい!」

振り返って抗議しようとした私の目の前に、小野原さんは百貨店の紙袋を差し出した。

「……これは?」

「何か食べられるものがあればいいと思って」

中をのぞく小さな白い箱がある。さらに、それを開くと、色とりどりのフルーツが載ったゼリーとプリンが四つほど、並んでいた。

「わっ、すごい、美味しそう!わざわざ買ってきてくれたんですか?」

「口に合うといいけど」

「合います、合います、絶対!ありがとうございます!」

「急に元気になったな」

と、小野原さんは目を細めた。

「こんなにいただいて、本当なら家に上がって頂きたいんですけど、ちょっと今日は……」

「分かってる。俺もそのつもりだから、 気を遣わなくていい。それから、さっき朱音から連絡があった。明日、一応退院出来るそうだ。しばらくは叔父の家で世話になるらしい」

「そうですか、良かった……。あ、私が体調崩してること、朱音さんには内緒にして下さいね。心配かけたくないし、まず自分の体を大事にしてほしいですから」

「香奈ならそう言うと思って、言ってないよ」

「ありがとうございます。私も早く元気になって、また朱音さんに会いに行きますね」

「そうしてくれると、朱音も喜ぶよ」

小野原さんはそう言うと、私の頭を軽くなでた。



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